社長ブログ > Bible from E.Isomura

7)IX 日本の都市社会の未来像-第二 都市論形成の軌跡 二 都市理論構築の生態基盤

二 都市理論構築の生態基盤

このような課題で述べるのは、私の都市論の形成に、どのような人物の影響があったかという点に限られる。考えてみると、そこに日本の友人が見当たらないのが残念である。

一九四五年に終わりを告げた太平洋戦争で、日本の都市と呼ばれる地域の大半は、空襲によって破壊された。その不幸な代表となったのは広島・長崎である。

一九六三年、第一回デロス会議と呼ばれる世界都市問題会議が、ギリシャの建築学者コンスタンチノス・ドクシアデスの主宰で、ギリシャの首都アテネで開かれる。その実際は、エーゲ海を船遊しながら、最後はデロス島で閉会式をやる。そこで通称デロス会議と呼ばれ、一九七三年まで毎年開催された。どういう因縁か、二年毎に交替する会議の第三回の議長を私が務めることになる。

あえて私が“理論的な軌跡”などというのは、私の都市論に影響を与えた学者のほとんどは、この会議のメンバーだったからである。

(一)コンスタンチノス・ドクシアデス

すでに故人となった教授は、自ら“エキスティックス”(私はこれを人間居住学と訳した)の理論を提唱し、人間の居住形態の過程のなかで“都市”を位置づけし、それを主として人口の数量に比例して、メトロポリス(大都市)、メガロポリス(超大都市)、エキュメノポリス(世界大都市)等、十四から十六の段階に類別する。

彼の理論は、コミュニティと呼ぶ“自然集落”の段階と、それ以上に人口が多くなる“都市集落”とを区別する。その発展段階の過程に、メガロポリス、エキュメノポリス等を位置づけしていることは、私の関心の的となっている。論集第III巻の一部は、彼の理論を記述した本をとり入れている。

ただ彼の理論は、せっかく都市の形成に“人間”という要素を取り入れながら、その人間がつくる“集団”、それが拡大していろいろな“組織”をつくり、都市もそのような系列の発展にあることについて、必ずしも十分な関心をもたなかった。コミュニティという言葉に、社会学でのとらえ方に近いセンスを持ちながら、それ以上の発展をさせなかったことには不満を覚える。

(二)マーガレット・ミード

有名な文化人類学者であり、ニューヨークの大都市博物館の館長をもつとめるかたわら、コミュニティ理論についての独自の見解を公にした。デロス会議での理論的指導者でもあった。

彼女の理論は、人類学者という立場もあって、”女性“の地域形成への役割を主張したことは注目される。私の理論指導に若干の影響を与えたとするならば、この点に集約されるといってよい。

(三)アーノルド・トインビー

同名の経済学者があったが、親戚の関係にあるが、別の人物である。

歴史を専門とするロンドン大学の教授である。彼の理論が私にとり入れられたとするならば、都市とは人間がつくる社会であるといった視点である。その論議の延長上に、都市を人間の文化の創造とみようとする。この点では私と同意見である。

ドクシアデスの地域構成の終点はエキュメノポリスとなっているが、トインビーはそれを文化の役割と見ようとした。それは過去に人間が、いくつかの都市づくりをしながら、たえず新しいものに挑んでいることを跡付けしていたと思われる。

(四)ルイス・マンフォード

社会学者であるがむしろ文明論者として知られ「都市の文化」という有名な著書がある。彼はトインビー教授以上に、都市のあらゆる構造を、人類の文化の所産とみる。この点は間違いないのであるが、都市は人間の集団である限り、その結晶を、社会の進歩のうえでどのように見るかという点の指摘が欲しかったと思う。もし彼がトインビーと直接話し会うような機会があったら、あるいは同じ結論に到達したのではないかと思う。

必ずしも同じ社会学者だからというのではない。また私は彼にたった一度であるが会って話したことがある。トインビーとは若干異なって、自分の学説に予想以上の自負を持っていたようである。大部な著書を残しているわりに、深みのある印象は少ない。

(五)ジャン・ゴットマン

ドクシアデスの都市体系のなかにあるメガロポリス論を拡大解釈して、二一世紀の都市は、この言葉で表現されるとまで主張するのがゴットマンである。

フランスの地理学者であるが、母国よりもアメリカ(プリンストン)や英国(オックスフォード)の大学での研究が多く、よく知られている。「メガロポリス」という本も、プリンストン大学時代の研究業績である。私の著書に「日本のメガロポリス」というのがあるが、その構成・調査等は、ゴットマンの示唆に負うところがある。

以上のように、いずれの学者も、日本に国籍をもたない。この点では、私の外国の都市への訪問、そこの学者との接触等、国内の研究所よりも、その面での接触・影響のあったこと、それが以下の都市理論の展開につながるので予め明らかにしておくのである。

 

1)都市論集III – VIII 人間回復のまちづくり理論