猫のチョットいい話し

第1話:風来ねこが教えてくれた諸行無常とアッと驚くどんでん返し

ツダさんの親戚の、ヤスミツという男性が亡くなって葬儀からツダ夫妻が帰宅した夜、同家の庭先で見知らぬ茶虎の男ねこが「お帰りなさい」ポーズをキメておりました。町内きってのねこ通のツダ夫人にしてはじめて見る顔である。で、どんなねこさんにもするように「こんばんわ、よかったら寄っていかない?」と声をかけたら気安く上がり込み、先住ねこの夜食を平らげ、ニアと礼をいって風のように去っていったのだった。以来、やっこさんは夜昼の区別なくフラリときては食べたりうたたねをしていくようになり、輪廻転生を半分信ずるツダ氏は彼をヤスミツと呼ぶようになった。 ヤスミツは家人にも先住ねこたちにも愛想がよく、家財にツメを立てたりオシッコをひっかけることもない、愛嬌のとびきりいいそれそれはよくデキた風来ねこなのであった。 彼が半分住み着いて2ヶ月ほど過ぎたある日の午後、買い物に出かけたツダ夫人は自宅から100mほど離れた瀟洒な家の玄関先で、置物みたいに正座しているヤスミツを見かける。こんな所でなにしてるのと聞くと玄関ドアがあき、優しい表情の女性が「お知り合い?」という。ええ、ウチのヤスミツですけど、よくお邪魔してるんですか。


事故死の1週間前のヤスミツ氏

ササキさんの話によれば、ツダ家に現れたのと同じころどこからともなくササキ家に顔を見せ、先住ねこたちとも仲良くなり、いまでは「ササキ家のねこ」と認知されてるんだという。事情が分かった二人は大笑い。以来、両家が新しいねこ友達になったことはいうまでもない。ヤスミツを媒介に、まことにほどのよいつき合いがはじまったのだが、3ヶ月と経たないうちに悲劇が起きた。 最初は、「あの子、このごろ見かけないけれど」と話す程度でそう深刻に考えていなかった。しかし、10日を過ぎ、2週間経ってもどちらにも姿を見せない。

そこで近隣の知人やねこ友達のネットワークを通じて”訪ねねこ”情報を発信し続けたところ、悲しい事実が判明したのである。彼は、両夫人が「見かけない、、、、」といっていた日の2,3日後、両家のほぼ中間点で乱暴運転のクルマに殺されていた。しかも、轢かれた直後に市のゴミ収集車が通ったため、現場近くの住人が収集作業員に頼んで生ゴミとして持ち去らせたらしい。ツダ、ササキ両家はヤスミツの遺影を掲げて喪に服す。某ホテルのコック長を勤めるツダ氏が腕を振った料理をササキさん宅に持ち込み、本当に夜を徹する通夜もした。  しかし、ほどなく悲しみは驚きに変わる。まだ子ねこだから、と避妊手術をしていなかったツダ家の若いおんなねこ、ミズホをなじみの動物病院に「そろそろ頃合いかと」、と連れていったら、手術前にミズホを診察した獣医師の曰く「あと1ヶ月足らず赤ちゃんが生まれますよ」。両家の期待を一身に集めたミズホは元気な子ねこ3名を産み、うち2名が予想通りの典型的な茶虎のおとこねこであった。いま、兄弟ねこはひとりづつ両家に別れて暮らし、それぞれが同じ名前で呼ばれている。出産の1ヶ月後にミズホは無事に避妊手術を済ませ、ヒマがあるとササキ家の息子に会いに出かけるという。

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