北の工房

3年ぶりに夏休みを取って、”旅”に出ました。当社の内装・家具をデザインしてくれたmonokraftのSさん(東川へ3年前に移住)と打合せをしたいこともあり、灼熱の東京からエスケープするように、北海道・旭川へ。取り合えずエアチケットと宿を予約して、何をするかは現地へ着いてから・・気ままなひとり旅です。

最初の日は、旭川空港から車で15分くらいの所にある「東川」monokraftSさんのゲストハウス泊。初めて聞く地名ですが、これからじわりじわりと私たちの記憶に残る町になる予感がします。地方はどこでも人口減少が進行していますが、「東川」は、そんな中で、2021年の人口増加数では、北海道1位を記録したそうです。人口8,500人の町「東川」は、移住者が増えて近隣の美瑛や富良野の人達からも注目されている町です。

「東川」の町づくりテーマは、写真、木工、デザイン。空港からの近さも、大雪山旭岳、十勝連峰が一望できる自然の豊かさも、水のおいしさも格別。それに加えて文化度の高さ。おしゃれな図書館やカフェ、クラフトショップなど、東京でも見当たらないような洗練されたショップが、町のあちこちに。私が訪ねた日は、町の図書館「せんとぴゅあ」で北欧の女性クラフト作家展が開催されていました。

東川に移住を決めたmonokraftのSさんとEさんの工房。スウェーデンの家具学校で学んだお二人が東川に工房を持たれたのは、家具づくりには欠かせない材木が豊富なところなんだそうですが、現在は東川町の発展活動に地元の人たちとじっくり取り組まれています。

おもしろいビジネスも小耳にはさみました。「人生の学校」。デンマーク発祥のフォルケホイスコーレをモデルにしたというベンチャー企業の新しい校舎も近々完成するそうです。社会人向けの学校だそうですが、高校卒業したての子から、今後のキャリアを考えたい30代が利用者層で、300人規模の人たちを受け入れるそうです。東川の魅力はこうした柔軟で優しい町の風土が作っているのかもしれません。

翌日は、美瑛町(日本の美しい村100選に選ばれた村)に移動。美瑛町は花畑が有名で韓国との直行便もある旭川は、お花畑を背景に写真を撮る人で溢れていました。もともとは畑を肥やすために下写真のようにひまわりを植えていたそうですが、その風景が写真家によって有名になり、今では観光客を誘致するために丘を花で埋め尽くし外国からも観光に来る貴重な資源になっています。

美瑛町はパノラマにひろがるパッチワークのような畑。遠くに十勝岳連峰や大雪山脈に覆われた盆地です。明治以降屯田兵によって開拓された北の大地。木を倒し鋤や桑で開墾してまだ100年ちょっとでこんなに豊かな土地に。4か月間は雪の下に閉じ込められる台地は、水はけを良くするために地中にパイプが埋め込まれていたり、ひまわりを植えたり・・、畑に立ってみるとふかふかの布団のように柔らかいので驚きます。冬の寒さを凌いでこその美しい村。爽やかな風が吹く丘は、自然に見えて実は人々が端正して作り上げた芸術ともいえますネ。

翌日は、富良野へ一日ぶらりと。下写真は2008年フジTV系ドラマ「風のガーデン」のために作られた庭です。

薔薇の庭には、大きな実がたわわについていました。ここも1日にしてならず。1年ごと蔦を伸ばし、実をつけ少しづつ成長する草花を育んでしっとりと自然に馴染んだ風景が作られています。この「風のガーデン」は作家倉本聰さんの依頼によって、ドラマのために造られ、今では観光資源として富良野には欠かせない魅力スポットです。この庭を造った人が気になって調べてみたら、旭川市永山町「上野ファーム」さんということが分かって・・、最終日「射的山」という小さな丘のふもとにある上野ファームへ行ってきました^^

1906年に入植し、代々米農家だった上野家へ嫁いだ上野さん。お米を購入する個人客に景観を楽しんでもらおうと、小径をつくったり花を植えたりしたのがきっかけで庭作りをはじめたのだとか。「あの路も私が鍬で耕しながら作ったのよ」と滴る汗を拭いながら話してくれた瞳が印象的。そして家族総出で作った美しい農村景観は、やがて2009年「北海道ガーデン街道」に連帯し、旭川市・上川町から十勝地方に至るガーデン街道へと繋がっていくのでした。

「イングリッシュガーデンのような庭ではなく、ここにしかないような庭づくりをしたいのよ」

野趣があって大胆だけど繊細。植物たちが伸び伸びと自由に空へ命を伸ばす気持ちのいい庭です。

庭仕事をしている上野さん。声をかけたらすっかり意気投合して懐かしい人に会ったような感覚を覚えました!すごく短い時間だったけど、珠玉の言葉をいくつもいただき旅のクライマックスは神様のプレゼントだったかな。

上野さんに教えてもらった絶滅危惧種「キレンゲショウマ」↑

ピンボケで輪郭がぼやってしまい残念ですが、記念に掲載。

はっきりした目的があった旅ではなかったけど、終わってみれば今回旅のテーマは「北の工房」かなあ。厳寒の北海道でコツコツと端正込めて一つひとつ自由にもの作りや庭作りをする人たちと出会えた旅。

どっこい!北の大地は逞しい!

黄昏時、知らない街をぶらぶら歩くのが好き。初めての町でも自分が住んでいるような懐かしさを感じるのは何故だろう。今回もいろんな人とお話したり、笑ったり・・、図々しい性分だからなんでしょうけど、私の特技かもしれない(笑)
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