昭和100年記念☆映画のはなし

今年は昭和元年から数えると100年目にあたるそうで、“昭和100年”記念行事が各所で催されています。映画業界でも昭和100年を彩った名作・ヒット作42本を一挙上映する「昭和100年映画祭 あの感動をもう一度」(~5月8日)を開催。銀座東映は、この映画祭を最後にまもなく閉館するそうです。皆さんにとって昭和を代表する映画はなんでしょうか? コマースの鈴木です。

※銀座東映映画館の記念写真

現代は、スマホや自宅のPCや、TVで・・エンタメを観るという人も多く、映画は昭和のレガシー的コンテンツかもしれません。そういうメディアの変化とグローバル化を追い風にしてエンタメ市場が成長しているのは歓迎すべきことですが、長年の映画ファンとしてはなんか寂しい。近年、映画はホラーやアニメが席捲していて、どうも敬遠している内に、めっきり映画館へ足を運ばなくなってしまいました。

だからといって平成や令和の時代に映画は作られていないかというと、そうではなくどっこい新しい世代が日本人らしい映画を作っていて、面白い!wowowで最近みた映画の中から、いくつか紹介したいと思います。

ハッピーエンドのホラー映画☆彡

ホラーやゾンビ映画は、どうも鑑賞後の心象がやりきれなくなって、殆ど見ないのですが、たまたま観た“進化系最恐ホラー” 映画『サユリ』(2024年8月23日公開)が秀逸!ハッピーエンドのホラーです(笑) 押切蓮介の同名人気ホラー漫画を白石晃士監督のメガホンで実写映画化。

※写真は映画と関係ありません

あらすじは、念願の一戸建てに引っ越してきた神木家の新しい生活がスタートしたのもつかの間、実はこの家、ワケあり物件で、家族が一人ずつ死んでいくという異常事態が発生。生き残ったのは、認知症の祖母・春枝と孫の則雄の2人だけ。神木家を襲う恐怖の原因は、この家に棲みつく少女の霊「サユリ」。さあどうなるのかしら?

ここから則雄とおばあちゃんの復讐劇がスタートするんですが、テンポ良く、ハッピーエンドで終わるストーリーは世代を超えて楽しめる仕上がり。パロディみたいな映画なんだけど、多文化をまぜまぜにして自分のモノにする日本人気質が成功していて、まさに2024年の映画☆彡

老怪・おばあちゃん役の根岸季衣さんがさすがです!よくぞ!この女優さんをキャスティングしてくれたと拍手を送りたい☆彡 昭和映画の歴史を体現するような根岸季衣さんは「つかこうへい」からTVドラマの悪女役までこなす大ベテラン。老婆の妖怪ぶりに芸歴の集大成を感じます。このおばあちゃんが孫を救うために認知症から突然復帰し、孫にスパルタ教育で「生」を伝授するシーンは圧巻(笑)

悪霊退治のコツをおばあちゃんは「奴に報いるワシらの唯一の武器は何だと思う?」、・・・掲載禁止ワードもあるのでこの辺りでネタバレにならないよう止めときます。

孫の則雄君に伝授するこの悪霊払いで、則雄君は優しい大人へと成長していくというお話。漫画原作を実写版で演出する面白さがコミカルで、ぶっ飛んでいて、映画ならではのカタルシスや感動があり、面白かった!こんなホラー待ってました!

※写真は映画と関係ありません

侍タイムスリップシリーズ☆彡

江戸時代の侍が現代にタイムスリップしたら・・?監督や原作、制作時期も違うのでシリーズ化されているわけではありませんが、実に面白い。

1)『サムライせんせい』

原作は、黒江S介による日本の漫画。

・監督・脚本:渡辺一志(制作年/2018)
・主演:市原隼人(武市半平太役)
【あらすじ】
切腹を命じられた幕末の志士「武市半平太」は、獄中で死を待つばかりが・・なぜか現代にタイムスリップしてやってきた。古老・佐伯に助けられ、佐伯家に居候しながら学習塾で子どもたちに勉強を教え始め人々と心を通わせていく。現代の猥雑な生活環境の中に突然やってきた「さむらい」だけど、子ども達に対峙する姿勢が凛として美しい。幕末と現代のカルチャーギャップが随所にちりばめられ大爆笑なんですが、実は幕末も令和も何も変わっていないんだと共感をよびます。むしろ、私たち現代人が、強くて礼儀正しい「さむらい」のような人を渇望していることに気づかされる。映画の中では、侍はずーーと羽織袴にちょんまげを結っている姿で現代人と暮らし始めるのだが、とても絵になっている。子どもはいつの時代も天真爛漫だ。時代を超えても変わらない人間の尊厳を映像を通して訴える素敵な作品でした。

主演の市原隼人は、大河ドラマで話題の人。猥雑な周囲の環境には微動だにしない凛とした「侍」を好演。礼儀正しくて美しいかったです。

2)『ちょんまげぷりん』

江戸時代から現代にタイムスリップした侍がシングルマザーとの出会いからお菓子作りに目覚め、親子との絆を深めていく。
居候させてもらっている恩返しにと奥向きのこと(育児や家事の意)を引き受けるが、やがて子どものためにプリンを作ったことをきっかけに、お菓子作りの楽しさに目覚めパティシエに。サムライと現代の人間が繰り広げるコミカルな笑いと絆が生まれるが・・。実はサムライは旗本の次男で、誰からも必要とされないコンプレックスを抱えた人間であった。日々育児と仕事の狭間で格闘するシングルマザーとその子どもに頼られ、自分の生きがいに目覚め、侍時代の悲哀もそっと告白するシーンは、じ~んとさせる。ぷりんはどう絡んでくるの?と思われるでしょう。映画を観てください。“プリン”が重要な鍵となる粋な終幕に思わず暖かい気持ちが蘇ってくるのでござる(笑)

・原作:荒木源の小説
・監督:中村義洋(制作年/2010年)
・主演:錦戸亮(安兵衛役)/ともさかりえ(遊佐ひろ子役)

2025年日本アカデミー賞優秀作品賞受賞☆侍タイムスリッパ―

こうして「侍シリーズ」をTVで観ていると、他にも類似作品があるのではないかと探して、「侍タイムスリッパ―」という映画にたどり着きました。この映画が今、上映されていたので久しぶりに映画館へ行ってみました。なんとこの作品、監督・脚本・撮影・照明・編集・他 安田淳一氏が一人11役を務め、自主制作映画の総予算は2,600万円だとか。「侍シリーズ」で劇場まで足を運ぶことへ繋がり、特に感慨深い映画となりました。日本アカデミー賞を受賞した作品だということは、映画館を出るまで気が付かなかった。ロビーのポスターで知ったほどで、奇跡的な一本に巡りあいました。

【あらすじ】

幕末の会津藩士と宿敵・長州藩士が斬合っている時に、落雷によって現代の京都の時代劇撮影所(太秦)にタイムスリップしてしまう。そしてそのまま撮影所のエキストラ「斬られ役」として生きていくという侍の話。特に刺客同志が真剣で斬りあう殺陣シーンは見事でござった!令和の世で幕末の志士が刃をあわせながら「俺たちは必至で生きた!・・」のクライマックスは劇場で観る価値ありです。

・監督/脚本:安田淳一
・出演者:山口馬木也、冨家ノリマサ

・制作公開:2024年8月17日

最初は池袋の映画館1館のみで公開された、いわゆる「インディーズ映画」が俳優陣の素晴らしい演技が口コミで話題を呼び、あっという間に1ヶ月で大手シネコンでも上映が開始。

最終的にはメジャー映画同様の300館以上に上映規模が拡大し、まだまだ全国で上映中の映画なっています。その上2025年の日本アカデミー賞を独占するという快挙。

10名たらずの自主映画のロケ隊が時代劇の本家・東映京都の全面協力を得て撮影を敢行し出来た映画。まさに令和的物語りを持つ映画なのでござる!

特に印象に残ったのは、侍がおやつにショートケーキを食べるシーン。

「日ノ本はだれもがこんなに美味なるものを食べられる豊かな時代になったのだなあ」と号泣。会津弁で訥々と独り言のように感慨にふけるのです。同じ日本人として過去へのオマージュと未来への希望が交錯する名場面でした。山口馬木也さんは52歳で受賞。あまり知られていない役者さんなので「遅咲き」俳優として取り上げらていますが、この人は「剣客商売」の秋山小平(藤田まこと)の息子秋山大治郎として長年TVドラマで活躍していた役者さん。だから殺陣シーンは演じるというよりホンモノぶりが見事です。

現代にタイムスリップした侍たちの凛とした姿は、私たちが最も求めている人間像なのかもしれません。また過去の侍たちと現代人とのカルチャーギャップこそあれ、本質的なところは何も変わらないんだなあ。日本人の遺伝子「陰徳陽報」がどの映画の底流にもあって時代を超えてシンクロします。「さむらい」=強い男性は、強いからこそ誰にでも優しく寛容になれる人。静かで大きな人物像を見せてもらいました。

ぜひ劇場で『侍タイムスリッパ―』観てください。お薦めですよ♪

いや~!映画ってほんとにいいですね!社会環境が変わっても、その時々の発想や写生で現代を切り取り、いつも新しい映画が生まれていく。漫画原作の実写版という映画、これからも期待したいです♪