SEOからAIO時代へ
猛暑お見舞申し上げます。コマースの鈴木です。
ショッピングセンターのホームページは、8月にアクセスが増加する傾向にあります。夏休みのイベント?と思いきや異常気象による営業時間や休館のお知らせにアクセスが増えるからなんですね。また、台風や山火事などの天災リスクが高くなる夏はホームページを運営受託する会社としては油断ならない季節。時代のトレンドを反映するSCの必要性はアクセス変化にも如実に反映されていて目が離せません。
AIの活用について
さて、毎日のように「AI活用」ニュースが飛び交っていますが、皆さんはどんな時にAIを活用していますか?
周囲の人に聞いてみたら・・、「レポートの構成を考えてもらう」「育児や家事の困りごとを相談してる」「プログラムのことを相談をする」「占ってもらう」「企画やアイディアのブレスト」「旅行の計画を立ててもらう」「長文の要約」「履歴書作成や採用審査に利用」・・・などさまざま答えが返ってきました。ChatGPTやGeminiのAIを立ち上げなくてもGoogleの音声検索やAI検索を無意識に利用しているので、日本はAI活用率が低いといわれていますが、ひたひたと利用機会が増えているのを実感。この春から、検索結果画面にこんなマークが出ているのに気が付いた方も多いのでは?
「Search Lab」とは、Googleが開発したAI検索機能で試験運用中のサービスです。今年3月から提供されていて、検索結果を掲出するだけでなくユーザーの要望を推測してAIが最適化提案してくれるサービス。アナリティクスの発表によると米国では、このSearch Lab利用が前年比12倍の伸長を示しているそうです。音声検索の利用率も半年前は20%位だったと思いますが、現在は32%位の利用率だそうです。聞き取り性能も良いので私も音声検索で調べること多くなりました。
AIは、キーワード検索結果→サイトリンクではなく、ユーザーが求めているであろう情報をwebサイトやsnsなどの情報を駆使して比較提案してくれます。
SEO→AIO時代へ
これまで、デジタルマーケティングの進化の中で、SEO(検索エンジン最適化)が重要な役割を果たしてきました。当社もSEO対策を考慮したシステム設計や施策に長年取り組み、「SES」導入サイトが上位表示されるための工夫と改修を続けています。検索エンジンではGoogle一強ですから、その非公開アルゴリズムを想定しながらSCのアクセス解析を検証し、サイトやシステム改修に活かしています。
しかし、AI活用が高度化し、ユーザーが日常的に利用するようになると、ウェブサイトにはどんな影響がでてくるのでしょうか?
ECサイトやweb広告、キュレーションサイトを運営する企業は、クリックゼロ時代がささやかれる中、危機感を募らせています。AIの基本的な情報源は、webサイト、ニュース記事、ブログ、学術論文、snsの投稿など、インターネット上に公開されているデータやユーザーの行動履歴など、さまざまな情報を駆使して検索結果を表示しています。米Googleの経過発表によると、キーワード検索と口頭問答形式によるAI検索利用数は、リリース前より10%も増えているそうです。
アクセス減少の可能性やゼロクリックが当たり前になると、メタ情報サイトの役割も大きく変化するでしょうし、WEBサイトの役割を再定義する必要がでてくるかもしれません。今までのサイト設計やSEOだけにこだわっていると、顧客接点は減るかもしれません。web広告やオンラインサイト、キュレーションサイトの動向が、そのままリアル商業施設にも当てはまるわけではないので、冷静にウォッチングしていく必要があります。
リアルの強みは、ネット上にある情報ではなく実空間を有している「施設」であるという存在です。検索順位とE-E-A-Tを総合的に評価するAIO時代に一段と存在感を増してくるはず。E-E-A-Tとは、Googleの検索品質評価基準。ウェブサイトやコンテンツの品質を評価する具体的基準には、Experience(経験)、Expertise(専門性)、Authoritativeness(権威性)、Trustworthiness(信頼性)の4つの要素を総合的に判定するアルゴリズム。これらの要素が高いほど、Googleからの評価も高くなり、検索結果での上位表示につながる可能性があります。これはGoogleアルゴリズム「ロングテール」、「1次情報優位」、「情報鮮度優位」などの原理がAIO時代になっても引き継がれていくと思います。より消費者にリーチできるAI時代のWEB最適化を見据えて、リアルのweb活用でも準備を進めていく必要はあります。
※上記の出典:Gemini(2025.07.17)
AIO対策をAIに質問すると・・。
さっそく「AIO対策」をAI(ChatGPT・Gemini・Perplexityなど)に聞いてみると、
———–AIによる回答・推薦で選ばれることを前提とした情報設計が必要である。
■ 具体例
・Googleマップ、口コミ(ローカルSEO強化)
※具体例を当社ブログで紹介「Googleビジネス登録のススメ」
・構造化データ(schema.org)のマークアップ
・Q&Aコンテンツ、ナレッジグラフ対策
・信頼できるデータ・一次情報発信(AIが参照しやすい形)
・AIが引用しやすいサイト設計
———こんな風に簡潔にまとめてくれますが、だからどうしろと?それは人間の仕事(笑)
AIO対策は、これだけ実装すれば解決という単純なものではないのですが、リアルならではの施策としては、Googleビジネスオーナー登録はなるはやで実装した方がいいです。
>※具体例を当社ブログで紹介「Googleビジネス登録のススメ」
AIO時代を視野に入れたサイト構築が必要になってくるわけですが、「SEO→AIO」時代というのは、SEO vs AIOという対立軸で捉えるのではなく、サービスが進化の過程にあると受け止めた方がいいかもしれません。キーワード検索もAI検索も利用者が増加している動向をポジティブに受止め活用する。
Googleの沿革や知的資産やリソースを鑑みてロングテールの原理や他を圧倒する情報量からみて、AI活用でますますGoogle一強が加速される気がします。AI最適化の設計やUI、情報鮮度と更新頻度の重要性などを踏襲したこれまでの実績は、進化の時代に活かされると思います。AIO時代でも大事なのはオーガニックな利用増で成長を持続するチリツモ型努力が結局は近道という法則は不変ではないでしょうか。
注目すべき指標:エンゲージメント率
ちょうど2年前にアナリティクスGA4に新しく「エンゲージメント率」という指標が増えました。
エンゲージメント率とは、ウェブサイトへの訪問者のうち、どれだけのユーザーが積極的にサイトと関わったかを示す指標です。GA4では、以下のいずれかの条件を満たした場合にエンゲージメントと定義されます(一般的に、エンゲージメント率が高いほど、ユーザーの関心や興味を引くコンテンツを提供できていると判断できます)
・10秒以上の継続セッション
・コンバージョンイベントの発生
・2回以上のページビュー
ユーザーやPV、閲覧時間、セッション当たりのPVは今でも基本指標ですが、スクロール回数やクリック率など閲覧の質を図る指標「エンゲージメント率」に当社は注目しています。「SES」導入サイトの平均は63%位。閲覧時間の平均は、セッション当たり3.4分
ウェブサイトのエンゲージメント率の目安は、サイトの種類やコンテンツによって異なりますが、一般的には 20%~40% が目安とされています。一方snsで人気のInstagramのエンゲージメント率は、1%〜5%はよい数値(by Gemini)※投稿に対するユーザーの反応(いいね、コメント、保存、シェアなど)の割合から算出。
セッション当たりの閲覧時間と比べてもwebサイトの閲覧は消費者の深く、しっかり探すニーズを満たす他メディアにない優位性ももっています。
「Search Lab」で検索
例えば、「丸の内で誕生日プレゼントを買える店は?」と検索したら、
—–Search Labs | AI による概要↓
丸の内には、誕生日プレゼントに最適なギフト選びができるお店がたくさんあります。特に、KITTE丸の内には、雑貨、ファッション、食品など、様々なジャンルの店舗が集まっているので、お相手の好みに合わせてプレゼントを選べます。また、東京駅グランスタにも、限定品や人気ブランドのギフトが揃っています。
Floral Design Kate Rose:
生花、ドライフラワー、プリザーブドフラワーなど、おしゃれな花束やアレンジメントが購入できます。
「+S」Spiral Market丸の内:
生活雑貨やステーショナリー、インテリア雑貨など、幅広い品揃えです。
中川政七商店:
日本の工芸品や生活雑貨が揃い、温かみのあるギフトが見つかります。
Hacoa DIRECT STORE:
木の温もりを感じるデザイン雑貨は、男性にも人気です。
CLASKA Gallery & Shop“DO”:
セレクトされた雑貨やアパレル、食器などが揃い、おしゃれなギフトが見つかります。
——上記は2025.07.17時点の結果です。こんな風に「Search Lab」でおススメされたらうれしいですね。掲出されている店舗は更新頻度が高く、上質、しかも信頼性が高いと評価された1次情報を発信している店舗。丸の内、東京駅周辺は、SCがひしめく激戦区ですから、単なる店舗数の多少や希少性でAIが推薦するのではなく、数ある店舗の中からE-E-A-T評価基準で選んでいると想定されます。E-E-A-T基準を想定した情報発信webサイトは、リアル商業施設の集客に有利です。
当社が運営を委託されているSCのwebページでは、まだアクセスが減少する傾向になく、前年比で増加しています。ECサイトやweb広告業界では、AIO時代へ移行する中でビジネスモデルに変容が起きている例もあり危機感を募らせています。AIO時代になるとどのように購買体験が変わるのか?選ばれるための来店動機をWEB上で創造していく。ブランディングや信頼性、正確性や情報の品質などリアル施設の持つ魅力を十分に発揮できるよう知恵を絞って、リアル商業施設の販促活動を展開していきたいですね。
AI活用のルール
ここからは、蛇足かもしれませんが、便利で賢くていいことばかりのAI活用。但し、利用するには注意点やルールも必要です。
情報漏洩リスクや著作権や肖像権侵害、ハルシネーション(誤情報生成)、 AIが生成した情報やコンテンツは、断定的に表現されますので、必ず人間が内容を検証し、事実確認を行うルールや社内教育は必須ですね。利用可能なデータ、禁止事項、緊急時の対応などガイドライン等、自社に合ったAI活用ルールを守って活用していきましょう。
わたしは今、カズオ・イシグロ著の「クララとお日さま」という小説を読んでいます。この小説はAIのモノローグで全編が語られるという嗜好で書かれていますが、クララというAIが人間の心の機微を人間以上に読み取る心情を綴ったものです。そんなに遠くない未来に起きる共存関係なのかもと想像しながら、楽しみでもあり、せつなくもあります。いずれにしても、AIに委ねることの範囲を決めるのは、人間側の問題。タイトルでもある「お日さま」は我々人間にもAIにも共通のエネルギー源の隠喩。最終章でAIがつぶやく「わたしには、曇った日でもお日さまのいまの位置がわかります。」のフレーズにAIが人間以上の信仰心や誠意を持つ時代を予感させるのは、作家の白眉かもしれません。
技術に翻弄されないでAIO時代への進化を対峙ではなく見つめていきたいですね。
暑さはこれからが本番!夏バテに気を付けて乗り切りましょう♪