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一方リアル店舗のバーゲン・クリアランスは大変厳しいものがある。背景には、「消費の低迷」、「若い人の巣ごもり」、「消費の買い控え」傾向などがよく指摘される。だがそうした外的要因に対して「ディスカウント」や「セールの前倒し」といった処方箋だけで、この先もやっていけるのだろうか?販促活動を例にとってみても、消費行動にマッチングしたPRができているかどうか検証してみる必要があると思う。
例えば、楽天の年末のメルマガでは、「福袋」の中身をAll商品写真付で紹介したものが送られてきた。ステータスのあるブランドなら写真で商品を確認すれば、十分なはず。モバイル経由での購入が元旦には全体の30%に達したというのは、それなりの施策を打っている成果の表れである。何故ネット通販サイトでできることが、リアル店舗のPRでできないのだろうか?3年位前から「福袋+中身+写真+画像付き」などの検索キーワードでアクセスする消費者が増加しているのは、リアル店舗でも把握しているはずなのに・・・。
さらにリアル店舗にとって無視できない存在は「アウトレット」の成長である。昨年12月に東京23区内では初となる大型アウトレットがお台場にオープンした。「109」系のパワーブランドも含め49店舗(うち19店舗はアウトレット初出店)は好調の滑り出しを見せていた。地方都市や郊外SCでは競合店の一つに必ずアウトレットモールを抱えているところも多いはず。
アウトレットとは、セールの売れ残り商品などをオフシーズンに割引価格で売るという業態と思っていたら、最近ではプロパーの売場に10日も陳列されただけで、アウトレットショップに入荷してきたり、最初からアウトレット向け商品として、同名ブランドで扱われていたりと、業際は限りなく失くなりつつある。消費者の立場から見れば、欲しい商品があっても「定価で買わない」が賢明な選択となってしまう。アウトレットショップへ流れてくるのを待つという「買い控え」を招く要因にもなろう。全部が全部そういう店ばかりではないから、極端な解釈ではあるがお客様の購買チャンネルが多様化している今、消費を喚起させるためには、リアル店舗の集合体であるショッピングセンターの販促は、どうあるべきなのだろう?
実は、この現象に似た業界がある。映画などのコンテンツビジネス領域である。
ご承知のように映画は配給権が劇場(3ヶ月)→レンタルビデオ店→スカパーやひかりTVなどの有料放送→民放TV局(無料)と段階的に開放されるように規制されている。余程見たい映画なら劇場へ足を運ぶが、忙しいし、そうそう劇場へ足を運びたくなる名作というのもあるわけではないあから、映画館へ行く機会はどんどん減っていく。そうして巣ごもり=自宅で見逃した映画を安く見るという視聴経験が増えていくということになる。「今見なくても、レンタルビデオかスカパーで見ればいいわ。安いし・・・」ということが増えていく。ちょっと待っていれば1/3の値段で映画が楽しめるのである。
だが、劇場へ行くと本編上映の前に予告編が数本上映されるので、その中からまた見ようという映画に出会う。興行元では、レンタルビデオ店や有料放送で見る習慣になれてしまわないよう、来館リピータを継続的に確保するという作戦(前宣の強化や割引サービスなど)が必要になってくる。また、1,000円視聴ディ(毎月1日やレディースディなど)やイベントなどの開催で、劇場離れしてしまった視聴者を呼び戻さなければならない。SCでいうなら福袋の前倒し販売やプレセール、クリアランスの長期化という現象は同類の現象といえよう。「価格破壊」ではなく、「価格自壊」現象である。
購買チャンネルがリアル店舗、ネット通販、アウトレットと多様化している。だが買物をする人がリアル店舗派とか、ネット通販派とか分かれているわけではない。リアル店舗でよく買物をする人はネット通販も利用している人でもある。
「洋服は定価で買わない」という消費者マインドは、今流行っている洋服でなくてもプライスダウン時に買うというネガティブ心理状態を通常心理状態にしてしまう危険を孕んでいる。
これからは、入荷商品の詳細情報を発信するライブ感がますます重要になっていくと同時に、「いつ買ってもらうか」という作戦も必要になってくるのではないだろうか?それとリアル店舗で買い物をする楽しさや季節感などを実感できる館内装飾や演出も強化したい。行ってみたくなるような街、そして施設はリアル店舗にしか出せない魅力があるはずだ。消費者が新しい消費パターンに定着してしまわないためにも、今年のSC展開は、重要な局面を迎えている。