5)四 「若竹」に期待する

四 「若竹」に期待する

若竹グループは、率直にいえば、やはり建築の技術を身につけた若者の集団である。ただこのグループは、私がここに書きつづけてきたことを、そのまま実践している集団である。

第一に、グループのメンバーは高知県に風水害があったとき、当時私が学長をしていた大学から、災害後の復旧の事業のために参加した人びとである。そして、その対象となった「同和地区」の生活がどのようなものか、対策がいかに重要であり、大切であるかを体験した。この点、私の学生時代と似ている。

第二に、その経験から卒業後も現地に踏みとどまって仕事をつづけた。最初は果たしてそれらが卒業後自らの生活を支える仕事になるかどうかと懸念した。しかしそれは、問題への真剣な取組みのなかで消えていった。それは、“真理に情熱を燃やす若さ”と真剣さの賜物だったと思う。

第三は、そのいささか無暴にも近い若者の組織の発想が地区住民の強い支持をえた。そして、“行政では接触できない”面の仕事を分担するようになる。研究所としての組織もできた。それはすでに高知県だけではない。四国をこえて他の地方の問題と取り組めるまでに根が拡がっている。

研究所を設立してからすでに五年、私はこの若竹グループの発展に限りない期待をもっている。この後に記述されているであろう、体験から生まれた「地域改善の理論と方法」は、日本の各種の学会でも討論の対象となると信じている。

(一九八五年三月発表)

「磯村英一都市論集III」人間回復のまちづくり理論より